ツーリングトーク バイク談義

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シュラフ(寝袋)の選び方

シュラフ(寝袋)の選び方

キャンプツーリングの安眠の道具がシュラフです。ツーリングに最適なシュラフの選び方を解説します。

形状による違い(封筒型とマミー型)

シュラフには封筒型とマミー型があります。それぞれ一長一短がありますが、封筒型は収納時に大きくかさばるのでツーリングユースには向きません。キャンプツーリングはマミー型シュラフを選びます。


これが封筒型シュラフです。名前の通り封筒に似た長方形をしています。

マミー型シュラフ


これがマミー型シュラフです。人の輪郭をかたどっています。収納時にコンパクトになるのでキャンプツーリングではこちらを選びます。

季節の違い

シュラフには季節別に夏用、春夏秋の3シーズン用、冬用に分けられます。キャンプツーリングでは夏用、3シーズン用を選びます。
この季節別のシュラフの分類は、シュラフメーカーに統一された基準があるわけではありません。また、同じシュラフメーカーでも対象とするユーザーによって夏用であったり3シーズンであったりします。
例えば、登山の夏用シュラフはツーリングユースでは3シーズンシュラフになります。

ダウンシュラフと化繊シュラフ

シュラフは中綿の素材によって、ダウンシュラフと化繊シュラフ(化学繊維)に分けられます。双方に一長一短があってどちらが良いというわけではありません。キャンプツーリングでは収納力に制限があるのでコンパクトに畳めるダウンシュラフが向いていますが、湿り気に強いので化繊シュラフもツーリングに不向きというわけではありません。

最初にダウンシュラフの構造を取り上げます。

ダウンシュラフの中綿について

ダウンシュラフの暖かさは中綿で決まります。
品質の高い中綿を使ったシュラフは収納時は軽量コンパクト、就眠時はとても暖かいです。その代わり驚くほど高価になります。

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ダウンシュラフのダウンとは、一般にはグース(雁)の胸の羽毛を指します。

しかし、シュラフでは、ダウンシュラフは羽毛を中綿にしたシュラフ全体を指すことが多いです。このため、ダウンシュラフと銘打った中に、グースのフェザーやアヒルの羽毛やニワトリの羽毛を使ったシュラフも含まれる様になります。購入の際に注意したいポイントです。
ちなみに、グースは雁、ホワイトグースは雁の家禽のガチョウです。アヒルは鴨の家禽です。

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ダウンは暖かで、スモールフェザーがそれに次ぎます。フェザーは劣ります。羽毛の形状を見るとよく分かります。

わたしが使用しているドイターアストロ280の中綿の表示は「ホワイトグース95%、スモールフェザー5%(800フィルパワー)」と書かれています。
ホワイトグースはガチョウの胸の羽毛、スモールフェザーはガチョウのお腹の羽毛です。800フィルパワーは羽毛の品質を表しています。

ダウンのフィルパワー表示について

フィルパワーはFPと略字されることがあります。
羽毛の品質を表す単位です。

一般財団法人日本繊維製品品質技術センターのホームページの
羽毛製品【フィルパワー】
によれば、1インチ立法辺り30gの羽毛が膨らむ体積を表します。
例えば、600フィルパワーとは30gの羽毛が600立方インチの体積にふくらんでいることを表し、数値が大きいほど良質なダウンとなります。
2011年にオンス(inch3/oz)表示からグラム(inch3/30g)表示に代わっています。

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おおむね、フィルパワーは700以上を高品質のダウン、700未満を通常の品質のダウンと呼ぶ傾向にあります。

単純に同じ気温での就眠を比較すると、フィルパワーが大きい値の羽毛なら、軽量コンパクトのシュラフになります。その代わり、フィルパワーの値が大きくなるのに応じて価格も高価になります。

例えば、モンベルのダウンハガー900 #3のメーカー価格は¥41500 +税ですが、ダウンハガー650 #3のメーカー価格は¥21500 +税です。900と650はそれぞれフィルパワーの値です。650から900になると価格は約2倍になります。
下記は、フィルパワーが左のグリーンが900、右の赤が650です。
価格はリアルタイムで表示されているので、比較できます。

化繊シュラフの中綿について

化繊シュラフの中綿は、各メーカーによって異なりますが、ここではわたしが使用しているイスカを例に取り上げます。

以下、イスカのWebSiteからの化繊シュラフの中綿に関する抜粋です。

マイクロライト
アルファライトモデルには、新しく開発した寝袋用の中わた「マイクロライト」を採用しています。「マイクロライト」は熱移動の原理に基づいて、1.5デニ-ルのマイクロ繊維と、 3デニ-ルおよび4デニ-ルの中空ポリエステル繊維とを組み合わせた新しい保温素材で、一般的な中空ポリエステル中わたと比較すると、保温性に優れているだけでなく非常にコンパクトな収納が可能です。

エアフレイク
ピルグリムモデルに採用された「エアフレイク」は、最新の生体模倣材料から生まれた化学繊維わたです。
羽毛のような柔らかな風合いを実現した特殊な繊維は、一般的なポリエステルわたと比べ、高い保温性とかさ高性を持っており、結果として寝袋をはじめとする製品の軽量化に貢献します。
また、化学繊維わたの本来の特長である、濡れへの耐久性、速乾性と合わさることで、全天候型寝袋の開発に大きく寄与しました。

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マイクロライトの繊維の写真です。

化繊シュラフのメリットのイスカからの引用です。

ルファライトモデル・ベ-シックモデルなどには、保温材として化学繊維の中わたを採用しています。
これらの化繊モデルは、保温材が同量のダウンモデルに比べれば、保温性や収納性ではやや劣るものの、濡れや湿気に強く乾きやすいという特長があり、悪天候があらかじめ予想される場合や、ご使用が長期に及ぶ場合には、非常に効果的な選択となります。また、ご家庭で比較的手軽に洗濯することも可能です。
さらに、性能が同等クラスのダウンモデルに比べると低価格で、動物性繊維ではないため、ノンアレルギ-であることも利点の一つです。

ダウンシュラフでは得られないメリットがあるので、安価という以外で化繊シュラフのニーズがあることが分かります。

キャンプツーリングでは、濡れても保温力を失わず、乾きやすいという点で重宝します。連日の雨天の時や、晴天の夜に放射冷却が起きてテントの室内が結露した時など、雨天・晴天でもキャンプは以外とテントの中に湿り気があり、シュラフはすぐに吸湿します。
1泊2日のキャンプならかまわないのですが、2泊以上のキャンプだと、湿って保温力を無くしたシュラフで就眠するのはかなりキツいです。

ダウンシュラフと化繊シュラフの選択

ダウンシュラフと化繊シュラフの選択

積載の荷物に制限のあるオートバイツーリングでは、収納時に小さく畳めるダウンシュラフは魅力的です。しかし、3日も雨が続いて保温力を喪失したダウンシュラフで就眠するのは苦痛です。

写真は、ほぼ同じ就眠温度のダウンシュラフと化繊シュラフの大きさの比較です。
黒がドイターのアストロ280、オレンジがイスカのアルファライト700です。
どちらのシュラフもほぼ+10℃の気温で、短パンにTシャツ姿で就眠して寒さを感じませんが、大きさが異なることが分かります。直径で倍くらい違います。

これだけ収納時の大きさが違ってくると、キャンプツーリングの様に荷物の大きさに制限があれば、小さく畳めるダウンシュラフがお薦めとなります。
特に、長期ツーリングの場合は大きさや重さの重要度が増します。
しかし、湿っても何とか寝られる化繊シュラフの魅力は捨てがたいものがあります。

ダウンシュラフを選ぶか、化繊シュラフを選ぶかは、ライダーの好みになります。ダウンシュラフは化繊シュラフの倍以上の価格です。
実際の購入価格は、ダウンシュラフのアストロ280が約26000円、化繊シュラフのアルファライト700が約13000円でした。

モンベルシュラフの温度対応表

シュラフを選ぶ際の適応気温の目安となるのが、モンベルの温度対応表です。
日本で売られているシュラフの対応温度は各メーカー独自の表示なので、メーカー相互に互換性や統一性がありません。

例えば、上記のイスカアルファライト700の適応気温は、イスカでは「最低使用温度-5℃」と表示しています。ドイターアストロ280の適応気温は「快適使用温度域-1℃」と表示しています。
どちらも実際に使用をすると、+10度前後が快適に眠れる気温です。

こうした各メーカーごとの対応温度の違いをある程度統一してくれるのがモンベルの温度対応表です。各メーカーに直接問い合わせは出来ませんが、しっかりとしたショップに問い合わせれば、「このシュラフはモンベルの#3とほぼ同程度です」と言う様な適応温度の回答が得られます。
イコールではありませんが近似値です。

以下、モンベルの温度対応表です。
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最も寒さに対応しているのがEXPで-40℃から-23℃。
以下は数字にシャープを組み合わせて表記されます。
#0 -31℃から-16℃
#1 -22℃から -9℃
#2 -15℃から -4℃
#3 -10℃から -0℃
#5 -2℃から +6℃
#7 +3℃から +10℃
左側の気温はタップリと厚着をしてシュラフで就眠する場合の気温、以下では快適睡眠温度。
右側の気温はTシャツに短パン、裸足と言う服装で就眠する場合の気温、以下では最低使用温度。
人間は寝ると徐々に体温が低下するので、就眠から6時間経過を目安としています。

ただし、体感温度は個人差があるので、この温度を絶対視せず、参考にとどめた方が良いです。
例えば、わたしはモンベルのスーパー スパイラルダウンハガー#1で、10月下旬の群馬県の谷川岳で就眠したことがありますが、早朝-3℃でつま先に寒さを感じて目を覚ましたことがあります。

シュラフの適応温度

テント泊をする場所の、キャンプをする季節の最低気温を気象庁のホームページで調べると、シュラフ選びの参考になります。
google 気象庁 最低気温

気象庁では、過去の統計から歴代の最低気温、最高気温の一覧表も公開しています。
歴代全国ランキング
各月の最高気温、最低気温もこのサイトで得られます。
8月の最高・最低の歴代気温
これで見ると、8月の北海道の気温は、2008年8月22日宗谷地方で1.5℃まで下がったことがあるのが分かります。
比較的近年で、地域を変えてみてみましょう。
2004年8月26日北海道上川地方下川 2.7℃
2004年8月26日北海道紋別郡滝上 2.9℃
2002年8月23日北海道十勝地方駒場 3.7℃

わたしは上記の紋別郡滝の上町に2005年から2007年まで住んでいたのでこのデータから来る夏の寒さを実感として分かるのですが、8月の北海道をキャンプツーリングする場合は5℃以下まで下がる就眠の装備が必要なことが、この歴代気温から分かります。

シュラフを選ぶ場合は、ツーリング先の最低気温にシュラフの適応温度を合わせると、快適な就眠が得られやすくなります。

最低使用気温は思い切り厚着をしてシュラフに潜り込んで6時間は寒さを感じずに眠れる目安です。メーカーによりばらつきが有り、10℃から15℃足す必要があります。

北海道と北東北の適応温度の目安
北海道は亜寒帯に属するので寒いのは知られていますが、秋田県北部、岩手県全域、青森県全域も北海道に負けないくらいに冷え込むことがありますので、ここでは一括します。

夏の北海道と北東北をキャンプツーリングするなら、モンベルの温度対応表で#3に含まれるシュラフ、各メーカーの表示なら最低使用気温が-10℃から-0℃のモデルがお薦めです。

春と秋のキャンプツーリングでは、モンベルの温度対応表で#2に含まれるシュラフ、各メーカーの表示なら-10℃以下の最低使用気温のモデルで無いと、寒くて寝られないでしょう。

南東北以南の適応温度の目安
夏のツーリングなら、南東北や信州の高原でキャンプをするなら、モンベル表示なら#3か#5、各メーカー表示で最低使用気温が-5℃以下のシュラフがお薦めです。それ以外の地方ならモンベル表示なら#5、#7、各メーカー表示で最低使用気温が0℃以上がお薦めです。

春と秋のキャンプツーリングでは、モンベル表示なら#3か#5を選び、各メーカー表示で最低使用気温を-5℃から-10℃のモデルを選びます。

沖縄県
晩秋、初春、冬にテント泊するなら夏用のシュラフが快適です。春から秋にかけては、シュラフの必要は無いでしょう。
シュラフカバーとインナーシュラフで事足ります。

機能で見るシュラフ

シュラフの適応温度は、各メーカーとも違いがありませんが、機能が大きく異なるので、どのメーカー、どのモデルを選ぶかで快適さが異なってきます。
ここでは、実例で各モデルの機能を紹介します。

モンベル ストレッチシステム
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シュラフの生地の素材と縫製を工夫して、伸縮性のあるマミー型シュラフとしたのがモンベルのストレッチシステムです。
マミー型シュラフの一番の欠点の狭く圧迫感を感じる点を見事に克服しています。このシュラフの就眠になれてしまうと、その他のモデルは使えなくなるほどの快適さです。

スーパー スパイラルダウンハガー#1を使っていますが、シュラフの中であぐらをかけるほどです。

裏と表から開けるファスナー
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殆どのシュラフに装備されているファスナーなので、もし無ければ選択肢から外す目安になる機能です。

シュラフは内側と外側から開けられる様なファスナーが付いています。
これは、シュラフと人の就眠の姿勢を考えると分かることで、シュラフに潜り込んでいる人が起きた場合は、内側からファスナーを開けた方が利便性が高いです。
シュラフから腕を出してファスナーを外から開けるのは現実的ではありません。

シュラフによっては、ファスナーの取っ手が一つで、その代わりに内からでも外からでもつまめる様な構造のモデルもあります。

シュラフのファスナーを外から閉じるベルクロ
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開け閉めのファスナーを不用意な力から守る為のベルクロです。
このベルクロも殆どのシュラフに付いている装備ですので、もし無ければ選択肢から外す目安になる機能です。

ベルクロの取り付け方で、粘着力が異なってきます。
モデルによってはすぐにだめになってしまいます。

二重閉じ
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頭からすっぽりとシュラフがかぶれて保温力のが高いマミー型シュラフですが、外側全体を閉じる部分と、方から首のラインをシュラフの内側で閉じる部分があるシュラフがあります。
防寒性に優れた機能ですが、防寒機能の高さがそれほど求められない夏用シュラフでは不要の機能とも言えます。

ただ、ある程度の価格帯以上のモデルでは、首回りに何らかの配慮を施してシュラフ内の暖かい空気を外に逃さない工夫が施されています。

ドイターアストロ280の二重閉じ
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シュラフの閉じ方は各メーカーのモデルによって異なります。
写真はドイターのアストロ280です。
外側と内側の二重閉じは、モンベルのシュラフと同じですが、内側の綴じ紐がゴムとなっていて少し使いづらいです。
その代わり、外側の綴じ紐は、引っ張り専用の紐が別途に付いていて使い安い工夫がされています。
一長一短と言ったところでしょうか。

ファスナーの合わさり目
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殆どのシュラフのファスナーは開閉部分が写真の様に離れています。
このファスナーの合わさり目の部分はテンションが掛かるので、丁寧で丈夫に縫製されていないと縫い目がほつれることがあります。一度ほつれてしまうと応急措置は出来ますが、根本的には修理不能です。

シュラフ選びの参考のポイント

シュラフを選ぶ場合、登山用シュラフを造っているメーカーの方が、細かな点まで配慮をされていると思います。わたしの主観です。
アウトドア用品メーカーがレジャー向けのキャンプ用品の一つとして造っているシュラフとは一線を描くようです。
ただ、価格が異なるので単純に比較は出来ません。

登山用シュラフの場合、過酷な環境で使用されるので、ほんの少しの不具合や使い勝手の悪さでも、登山家に取っては命にかかわる場合もあるので、酷評されます。悪い話ほど口コミで広がるので、登山シュラフメーカーはそうしたシュラフを製品化しないの社内システムがあるのだろうと思います。

ドイター、モンベル、イスカのシュラフを使っていて、そう思います。
同じ適応温度のシュラフと比べて価格は高くなりますが、登山用シュラフを造っているメーカーのツーリング向けシュラフを選択するのが賢明だと思います。
登山ほど過酷な環境でのテント泊は、キャンプツーリングではまず行いませんが、一般的なオートキャンプに比べると荷物の積載能力が小さく、宿泊地も高所の峠のキャンプ場から強風吹き荒れる海岸線のキャンプ場まで、オートキャンパーよりは厳しい条件下でのキャンプを強いられる傾向にあります。

シュラフを選ぶときに何か参考にしようとすると、大抵が登山家、いわゆる山屋の使うシュラフの選び方が前面に出てきます。わたし自身、日本アルプスなど日本中の高山に登っている山屋なので、そうした情報の正しさは理解できるのですが、登山とツーリングの違いも理解しているつもりです。

シュラフだけでは無いのですが、アウトドア用道具の殆どは登山用とツーリング用では異なるので、別途の基準で選択をしないと最適な道具は手に入りません。

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